アトピー性皮膚炎の子供は白内障になりやすい、と聞きました。本当でしょうか?
ご相談者様

小学1年生の子供がいて、アトピー性皮膚炎と診断されました。アトピーの子供は将来、白内障になりやすいと聞いたのですが本当ですか? 本当だとしたら、予防法はないのですか?
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アトピー性皮膚炎が白内障を合併(併発)しやすいというのは事実です。これをアトピー性白内障といいます。1914年に海外で初めて報告され、以降いろんな研究がなされているのですが、発症のメカニズムを含め、不明点が多い疾患です。
30歳頃の患者が多く、早ければ思春期から20歳前後でも発症します。加齢性白内障が歳をとれば取るほど患者数が多くなるのと違い、若くして発症する点が特徴的です。 -
うちの子は6歳のときにアトピー性皮膚炎と診断されたのですが、アトピー性白内障は皮膚炎になってどれくらい経つと起こりやすくなるんですか?
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まずアトピー性白内障発症までの年数ですが、乳児期にアトピー性皮膚炎は多発します。その乳児たちを追跡した調査がいくつかあって、それによると、皮膚炎の発症からアトピー性白内障発症までは10~15年でした。症例数が少ないので一般化はできませんが、参考になりますね。
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どれくらいの割合の人がアトピー性白内障になるのですか?
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頻度については、様々な報告がありますが、小規模な調査が多く、定まった結果はありません。いずれにしろ、決して少ない頻度ではないと思われます。母数となるアトピー性皮膚炎の患者数が多いですから。特に、乳幼児から思春期までの子供ですね。2000年から 2002年にかけて行われた厚生労働科学研究によると、1歳半で9.8%、3歳では13.2%です。その後、6歳~7歳で11.8%、12歳~13歳で10.6%、18歳から22歳で8.2%と、年齢が進むにつれて減少していきます。
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アトピーは子供に多く、大人になると治るとか少なくなる、とかよく聞きますよね。
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そうですね。アトピー性白内障の頻度ですが、仮に6歳でアトピー性皮膚炎が発症したとして、先ほど紹介した発症までの年数の例を当てはめると、6歳+10~15年でアトピー性白内障発症は16~21歳となります。その世代の人口を600万人とすると、その8%、48万人がアトピー性皮膚炎を発症。仮に、そのうちの1%がアトピー性白内障を発症するとしても、怖い数字になりますね。
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油断してはならない頻度といえますよね。予防するにはどうしたらいいのですか?
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発症のメカニズムがよくわかっていないので決定的な方法はないのですが、アトピー性白内障は皮膚炎の罹患年数が長いほど、また顔面の皮膚炎が増悪するときに、発症・進行する傾向にあるといわれています。
したがって、アトピー性皮膚炎のある子供は定期的に眼の検査をして、早期発見に努めることです。特に目の周囲にアトピーがある場合は、皮膚炎の治療とケアを続け、良好な状態を保って、なるべく目の付近を掻いたり、こすったりしないようにすること。こういったことがアトピー性白内障の発症を抑制すると思われます。 -
わかりました。気をつけます。
まとめ
アトピー性皮膚炎が白内障を合併(併発)しやすいというのは事実です。アトピー性白内障は1914年に海外で初めて報告されましたが、発症のメカニズムを含め、未だに不明点が多い疾患です。皮膚炎の発症からアトピー性白内障発症までの期間は、乳児期にアトピー性皮膚炎を発症した子どもを追跡した調査によると、10~15年とされています。症例数が少ないので一般化はできませんが、参考になります。発症割合については決して少なくないと思われます。特に、乳幼児から思春期までの子供の発症頻度が高い傾向にあります。
2000年から2002年にかけて行われた厚生労働科学研究によると、1歳半で9.8%、3歳では13.2、6歳~7歳で11.8%、12歳~13歳で10.6%、18歳から22歳で8.2%と、年齢が進むにつれて減少していきます。アトピー性白内障は皮膚炎の罹患年数が長いほど、また顔面の皮膚炎が増悪するときに、発症・進行する傾向にあるといわれています。したがって、アトピー性皮膚炎のある子供は、なるべく目の付近を掻いたりこすったりしないようにすることとと、定期的に眼の検査をして早期発見に努めることが大切です。


監修:佐藤 香
アイケアクリニック院長、アイケアクリニック銀座院院長。集中力を要する緻密な作業を得意とし、とくに最先端の白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。そのほか、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケア――「トータルアイケア」の提供を目指す。現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌など、さまざまなメディアに取り上げられている。著書に『目は若返る』『スゴい白内障手術』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。