白内障手術をすると、紫外線から目を守れなくなると聞いたのですが本当ですか?
ご相談者様

白内障手術をすると、紫外線から目を守れなくなり、かえって目に悪い、と聞いたのですが本当でしょうか? とくに高齢者はよくないとも聞いたのですが…。
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「とくに高齢者によくない」というフレーズから推測するに、恐らく「白内障手術をすると『加齢黄斑変性(かれいせいおうはんへんせい)』という、高齢者に多い目の疾患にかかりやすくなる」というウワサをお聞きになったのではないかと思われます。そうであればまったくの事実誤認です。
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加齢黄斑変性…ですか? ときどき新聞などで見かけたりするのですが、どんな病気ですか?
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加齢黄斑変性とは、紫外線を浴び続けることにより、目の「黄斑」が変性し、視界が歪んだり、視力障害が起きたりしてしまう病気です。その名の通り加齢による目の変性のため、必然的に高齢の患者さんが多い疾患でもあります。
黄斑は網膜の中心部にあり、鋭敏な視細胞が集まって視力の大部分を作り出している部位です。たとえるならば、映像を映し出すスクリーンの中心部ですね。視力の大部分を担うものですから、病気が進行すると失明する危険性があります。実際、欧米では以前より失明原因の第1位となっています。 -
紫外線を浴び続けると、目の中心部分に病気が生じるリスクがあるのですね。そんな加齢黄斑変性と、白内障手術をするとかえってよくない、というウワサにはどのような関係があるのでしょうか。どういった理屈でそのような発想に繋がるのでしょうか?
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大前提としてこれは不正確な認識なのですが、「白内障手術は目によくない」という意見には、次のような理屈があるようです。
●白内障は水晶体が濁っている状態なので、紫外線が通りにくい。結果的に目を紫外線から守っていることになる。
●白内障の手術をすると水晶体がきれいになり、光も紫外線も通りやすくなるので、かえって目に悪い。
●だから白内障の手術はやめたほうがいい。
繰り返しますが、これはまったくの事実誤認です。信じて実行している人がいれば、かえってリスキーです。 -
具体的にどういう部分が危ないのですか?
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白内障も黄斑変性も主に加齢が原因で起きうる疾患なので、白内障の患者さんは、黄斑変性症を発症する可能性や、すでに発症している可能性が高いのです。その場合、放置しておくと病気が進行してしまい、失明のリスクを高めることになります。ですから白内障の疑いのある方や、また手術を先延ばしにしている方は、むしろ積極的に検査を受けることをおすすめします。
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デマというか事実誤認というのは怖いですね。手術のことで「どうかな?」と思うことがあったら、かかりつけの医師に相談することが大事ですね。また、私はそもそも白内障手術を受ける方針ではありましたが、お話を聞いて、訳もなく先延ばしにするのはやめようと思いました。ありがとうございました。
まとめ
これはまったくの事実誤認です。「白内障手術をすると加齢黄斑変性」という高齢者に多い目の疾患にかかりやすくなる」という噂もあるようですが事実ではありません。加齢黄斑変性は、紫外線を浴び続けることで目の「黄斑」が変性し、視界が歪んだり視力障害が起きたりする病気です。文字通り加齢が主要因のため、必然的に高齢患者が多い疾患となります。
そもそも事実ではありませんが、「白内障手術は目によくない」という意見には次のような理屈が存在します。「1. 白内障は水晶体が濁っている状態なので紫外線が通りにくい。結果的に目を紫外線から守っている」「2. 白内障手術を行うと水晶体が綺麗になり光も紫外線も通りやすくなるのでかえって目に悪い」「3. 1〜2の理由から白内障手術はやめたほうがいい」。しかし繰り返しになるが、これは医学的にまったくの事実誤認です。
白内障は放置していると病気が進行してしまい、失明のリスクを高めることになります。なので、白内障の疑いのある人や手術を先延ばしにしている人は、むしろ積極的に検査を受けることをおすすめします。


監修:佐藤 香
アイケアクリニック院長、アイケアクリニック銀座院院長。集中力を要する緻密な作業を得意とし、とくに最先端の白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。そのほか、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケア――「トータルアイケア」の提供を目指す。現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌など、さまざまなメディアに取り上げられている。著書に『目は若返る』『スゴい白内障手術』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。