手術後、いつから「快適な日常生活」を送れる?
白内障手術は、白内障そのものだけでなく近視や遠視、乱視、老眼までも同時に治療することが可能です。そのため手術をすれば若いころ以上に「快適で質の高い生活」を送ることが可能になるのですが、手術の効果を最大限に引き出すためには、術後の過ごし方が大切です。
デスクワークであれば翌日から復帰が可能
仕事への復帰はデスクワークであれば翌日からでも可能です。ディスプレーなどを長時間見ることを避け、徐々に慣らしていけば1週間~2週間くらいで元のペースでの仕事が可能となるはずです。ただし、屋外でハードな作業が必要な仕事や重いものを持つ仕事では、傷口が開くリスクが高まります。手術後、1週間程度は控えていただくことが望ましいため、事前に職場の上司や担当者と復帰スケジュールについてよく相談しておくことをおすすめします。
術後の切開創は清潔に保つことが大切
白内障手術後は、切開創を清潔に保つことが大事です。切開創からの感染症が起こると視力に影響する場合があるので、この点は厳重な注意を要します。それでも就寝中や生活のなかで、思わず目に触れることや、水などが入ることもありますから、必要に応じて眼帯やゴーグルなどをつけていただきます。手術後の洗顔や入浴、シャワー、洗髪、化粧、運動などについては、別項でやり方を説明していますので、ご参照ください。
また通常、3種類の目薬が処方されます。感染症を防ぐためのものと炎症を防ぐためのものとが含まれています。医師の指示に従って、毎日決められた時間に使用しましょう。点眼薬はおよそ1~3ヵ月間は続ける必要があります。術後の経過が順調であれば、点眼する回数を減らしたり、目薬の濃度を薄くしたりすることもあります。まずは毎日、決められた目薬を決められた回数だけ使用するようにしましょう。それが最も早く日常を取り戻すことにつながります。
手術の効果を最大限に引き出す「経過観察」
手術後の経過が順調であるか、異常の予兆はないか、それらを経時的にチェックしていくための検診を「経過観察」といいます。当院の経過観察スケジュールは次の通りです。
1回目 手術の翌日
2回目 前回の検診から3~4日後(やや回復が遅い方や高齢の方が対象)
2~3回目 前回の検診から1週間後
3~4回目 前回の検診から2、3週間後
4~5回目 前回の検診から1ヵ月後
6~7回目 前回の検診から2ヵ月後
特に手術翌日の診察は重要です。万が一、手術後に違和感があって、それが続いているようであればお伝えください。以降2ヵ月に渡って合計7回ほどの経過観察を行います。これは切開創の回復の具合を確かめたり、もしもの不具合の兆しを察知するためだけではなく、手術の効果を最大限に引き出すためにも大切な過程です。
翌日から積極的に目を使い、快適な視界を謳歌
術後は瞳孔が広がっているため見え方が鮮明ではありませんが、歩けないほどではありません。瞳孔の状態も4~5時間で元に戻ります。とはいえ、重いものを持ったり運動をしたりなどはせず、手術当日は安静に過ごしてください。
しかし、翌日からは積極的に目を使っていただきたいと思います。目は「今までの見え方」「白内障下の見え方」に慣れてしまっています。「よく見える」という状態にいち早く慣れるという意味でも、目は使ったほうがよいのです。
テレビを見るにしろ、本を読むにしろ、こうすれば「目がよく見えるようになる」と意識しましょう。屋外に出かけても同様です。通りの広告、樹木など周囲の風景を積極的に見るようにしましょう。
これまで多くの患者さんを診てきましたが、手術の効果を補うような前向きな取り組みをされる方ほど、いち早く快適で質の高い生活を得ているという実感があります。


著者:佐藤 香
アイケアクリニック院長、アイケアクリニック東京院長。集中力を要する緻密な作業を得意とし、とくに最先端の白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。そのほか、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケア――「トータルアイケア」の提供を目指す。現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌など、さまざまなメディアに取り上げられている。著書に『目は若返る』『スゴい白内障手術』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。