眼内レンズを入れてもスポーツできますか?コンタクトのようにズレないでしょうか。
ご相談者様

白内障手術で入れる眼内レンズは、コンタクトレンズのようにズレる心配はないのでしょうか。スポーツ愛好家なので、手術後も問題なく楽しめるのかどうか、またいつから再開してよいのかが気になります。
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ご安心ください。手術で入れる眼内レンズはコンタクトレンズのように角膜にかぶせるのではなく、もともと水晶体が収まっていた袋に挿入します。袋は「水晶体嚢(すいしょうたいのう)」といい、柔軟性に富んでいて、眼内レンズは水晶体が収まっていたときと同様にしっかりと固定されます。したがって、日常生活やスポーツに伴う動作によって眼内レンズがズレたり脱落したりすることは、滅多に起こりません。
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仮にズレや脱落が起こるとすれば、どういうときですか?
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眼内レンズの偏位や脱臼が起こるとすれば、原因は主に2つです。1つは眼内レンズが入っている袋(水晶体嚢)と、水晶体の厚みを調整してピントを合わせる役割を担っていた「チン小帯」や「毛様体」が弱くなったり、切れたりすることによるものです。白内障を長年放置して極度に進行したり、他の目の疾患により、劣化して弱くなっているのです。
2つめの原因は、外傷性の衝撃です。顔面や頭部、とくに目の近辺を激しくぶつけたりすることで起こる可能性があります。アトピー性皮膚炎により、目やその周囲を繰り返しこすったり掻いたりすることも原因となると指摘されています。 -
目に衝撃が加わるとよくない、というのはわかりました。しかし「チン小帯」や「毛様体」はあまり聞きなれない言葉ですね。それはどのようなものなのでしょうか?
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「毛様体」とは目の周りの組織で、「チン小帯」とは水晶体の厚みを調整する、伸縮性のある細い筋肉です。チン小帯は、眼内レンズが収まっている袋(水晶体嚢)と周囲の組織(毛様体)をつなげて、支えています。
白内障以外の眼科疾患を長年放置するなどして、これらの組織の劣化が通常より進行している、あるいは手術後に進行した場合、何らかの拍子に破れたり切れたりして、眼内レンズがズレたり脱落することがあります。また顔面や頭部を強打するなどの外傷を伴う衝撃でも起きることがあります。特にアトピー性皮膚炎をお持ちの患者さんだと、痒みを抑えるために、繰り返し目を強くこすったり掻いたりしてしまいがちです。それが目に対する衝撃として積み重なっていった結果、チン小帯が弛緩して切れてしまうこともあり、眼内レンズのズレや脱落の原因となり得ます。 -
日常生活をするにしろ、スポーツをするにしろ、目をこすったり叩いたりしないということですね。そうであれば、なおさらスポーツ愛好家として、術後の再開のタイミングが気になります。おおよその目安はありますか?
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スポーツや運動の種類によって控える期間が異なります。たとえばウォーキングでしたら手術の翌日から再開してかまいません。激しい運動や接触の可能性がないスポーツとして、たとえばゴルフやジョギング程度であれば、手術後2~3週間程度は控えていただければと思います。格闘技や水泳などのスポーツの場合は1ヵ月ほどは控えたほうがよいでしょう。
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なるほど。数ヵ月は我慢しなくてはいけないかと覚悟していましたが、思ったより短期間で復帰できるのですね。安心しました。
まとめ
眼内レンズは、水晶体嚢(すいしょうたいのう)という水晶体が収まっていた袋に挿入され、しっかりと固定されるので眼内レンズがズレるような事は滅多に発生しません。
ただし、術後の控える期間がスポーツによって異なります。
激しい運動のないウォ―キング等:1日程度
ゴルフやジョギング:手術後2~3週間程度
格闘技や水泳:一か月程度


監修:佐藤 香
アイケアクリニック院長、アイケアクリニック銀座院院長。集中力を要する緻密な作業を得意とし、とくに最先端の白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。そのほか、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケア――「トータルアイケア」の提供を目指す。現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌など、さまざまなメディアに取り上げられている。著書に『目は若返る』『スゴい白内障手術』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。