白内障手術で、挿れた眼内レンズが合わないといったことはないのでしょうか?
ご相談者様

友人が白内障手術をしたのですが、「術後の見え方が今ひとつしっくりこない」といっています。今月私も手術をする予定なのですが、挿れた眼内レンズが合わないということがあり得るのでしょうか? 不安です。
-
手術後の見え方が、今ひとつしっくりこない、とおっしゃっているご友人の状況が明確でないのですが、推測できる原因を想定してお答えします。まず第一に手術からさほど時間が経っていない場合、たとえば1~3ヵ月以内であれば、術後の見え方の慣れの問題かもしれません。新しく挿れた眼内レンズの見え方は、術前の見え方とは多少なりとも差異があります。この差異の感じ方には個人差があって、手術後直後から順応して、世界が変わった、という表現をされるくらいよく見えるようになる方がいらっしゃいます。反対によく見えるときと見えないときとのムラがあるなど、順応に時間がかかる方は、慣れるまでに数か月かかることもあります。この場合、慣れと比例してよく見えるようになるので、あせらず鷹揚に構えていただければと思います。
-
全員が手術後すぐによく見えるようになるわけではないのですね。
-
少数ですが、慣れるまで時間のかかる方がいらっしゃって、またどれくらいで慣れるか、期間にも幅があるのですね。考えられる第二の原因ですが、眼内レンズの度数が合っておらず、想定した視力が出ていないのかもしれません。眼内レンズの度数は、通常、眼軸長(眼球の奥行きの長さ)と角膜の曲率(カーブの度合)を計測して決めます。眼軸長は近眼の人では長め、遠視の人では短めです。角膜のカーブも人によってきつかったり緩やかであったりします。これらの数値に眼内レンズの度数計算式を当てはめ、度数を算出して決定するのです。しかし、この計測にわずかでもズレがあると、そのズレが眼内レンズにも反映されるので、度数の合わないメガネをかけているのと一緒になり、術後の見え方に不満が出るのです。
-
計測にズレが生ずることがあるのですか?
-
そうですね。計測時にドライアイなどで目に傷があったり、過去にレーシックの手術を受けていたりすると、計算式が合わずに度数のズレに直結する場合があります。こういった事態を避けるため、手術中に目の計測を行う、最新システム(ORAシステム)が開発されました。私のクリニックも導入していますが、この装置を使うと仮に術前の測定値に変化が生じたとしても修正してくれるので、度数のズレのない最適なレンズを挿入することができます。
-
その装置の有無は、手術を受ける施設を選ぶ際のよい目安になりますね。
-
丁寧に計測、計算をして眼内レンズの度数を決定すれば度数が合わないことはありえないのですが、可能性のひとつとして挙げさせていただきました。それともうひとつ、ドライアイやコンタクトレンズの常用なども、眼内レンズの度数のズレを引き起こす要因になる場合があるので、これについては担当医師に必ず申告されるようにお願いします。
まとめ
詳細の状況が不明なため推測とはなりますが、第一に手術からさほど時間が経っていない場合(術後1〜3ヶ月)、見え方の”慣れ”の問題かもしれません。新たに挿入された眼内レンズの見え方は、術前の見え方とは多少なりとも差異があります。個人差はあるが順応に時間がかかる方は、慣れるまでに数ヶ月かかることもあります。
第二の原因は眼内レンズの度数が合っておらず、想定した視力が出ていないケース。眼内レンズの度数は眼袖長(眼球の奥行きの長さ)や角膜の曲率(カーブの度合)等を患者の症状に合わせ算出して決定します。この際、計測時にドライアイなどで目に傷があったり、過去にレーシックの手術を受けていると、度数の計算式が合わず度数のズレに直結する場合があります。
このような事態を避けるために、当院では手術中に目の計測を行う最新の「ORAシステム」を導入しています。ORAシステムによって、仮に術前の測定値に変化が生じたとしても術中に正しく修正してくれるので、度数のズレを心配する必要はありません。そもそも丁寧に計測・計算して度数を決定すれば合わないことは稀ですが、度数のズレが発生する可能性もゼロではないのでドライアイやコンタクトの常用時は、必ず担当医師に申告するべきでしょう。


監修:佐藤 香
アイケアクリニック院長、アイケアクリニック銀座院院長。集中力を要する緻密な作業を得意とし、とくに最先端の白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。そのほか、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケア――「トータルアイケア」の提供を目指す。現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌など、さまざまなメディアに取り上げられている。著書に『目は若返る』『スゴい白内障手術』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。