むかし重度のアトピーだった知り合いが、⽩内障⼿術を断られました。なぜでしょうか?
ご相談者様

若いころに慢性的なアトピー性皮膚炎があり、たびたび悪化して目の周りを真っ赤にしていた知り合いがいます。加齢とともに軽くなってきたようで、今では一見してそうとはわからないくらいなのですが、白内障で近医を受診したところ「うちでは手術できません」と断られたそうです。今は症状がおさまっているのになぜ手術が受けられないのでしょうか?
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アトピーによるかゆみをおさえようと、長期間にわたり目をこすったりたたいたりしていた人では、チン小帯という組織が断裂している恐れがあります。その場合、白内障手術の難易度が高くなってしまうのです。
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それはどうしてですか?
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チン小帯は、白内障手術時に眼内レンズを入れる嚢(のう)という袋を支える役割があるので、そこが弱っていると術中に嚢が破損したり、レンズを嚢の中に固定できなくなったりするリスクがあるためです。最悪の場合、手術時に水晶体や眼内レンズが目の中に落下してしまう恐れがあり、硝子体手術という別の手術をしなければならなくなります。
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それでは、アトピーのある人は白内障手術を受けられないのでしょうか
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いいえ。白内障手術を受けられないということはありません。重度であったとしても眼内レンズを入れることは可能です。お知り合いの方がかかった眼科が「手術できない」と判断した根拠がわからないので、あくまで推測になりますが、難易度の高い手術には対応していない施設だった可能性がありますので、セカンドオピニオンをとってもいいのではと思います。
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医療機関によって、対応できるところとできないところがあるということでしょうか。
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そうですね。たとえば、チン小帯が弱く通常の術式では眼内レンズが固定できない場合、強膜内固定術といって、眼球の中でもっとも丈夫な強膜と呼ばれる部分に、眼内レンズのループ(足)を差し込んで固定する手術が検討されますが、白内障手術はできても強膜内固定術の経験がない医師もいます。
また、万が一のケースですが、目の奥に水晶体が落ちてしまった場合に必要な、硝子体手術ができる医療機関も限られています。
ただ、こうしたものも含め、他では難しいといわれてしまったケースでも、手術数が豊富で難易度の高い症例も数多く経験している当院のような医療機関なら問題ありません。 -
なるほど。アトピーで断られたからとあきらめず、症例数が多くて難易度の高い手術もできる医療機関に相談するよう、知り合いに助言しようと思います。
まとめ
白内障手術の難易度が高くなってしまうためです。今症状がおさまっていても、アトピーによるかゆみをおさえようと長期間にわたり目をこすったりしていた人は、チン小帯という組織が断裂している恐れがあります。チン小帯は、白内障手術時に眼内レンズを入れる嚢(のう)という袋を支える役割があるので、そこが弱っていると術中に嚢が破損したり、レンズを嚢の中に固定できなくなったりするリスクがあります。
ただ、過去のアトピーの症状が重度であったとしても、医療機関によっては眼内レンズを入れることが可能な場合があります。たとえば、チン小帯が弱く通常の術式では眼内レンズが固定できない場合、眼球の中でもっとも丈夫な強膜と呼ばれる部分に、眼内レンズのループ(足)を差し込んで固定する強膜内固定術が検討されますが、白内障手術はできても強膜内固定術の経験がない医師もいます。また、万が一のケースですが、目の奥に水晶体が落ちてしまった場合に必要な、硝子体手術ができる医療機関も限られています。こういった例も含め、他では難しいといわれてしまったケースでも、手術数が豊富で難易度の高い症例も数多く経験している当院のような医療機関なら問題ありません。


監修:佐藤 香
アイケアクリニック院長、アイケアクリニック銀座院院長。集中力を要する緻密な作業を得意とし、とくに最先端の白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。そのほか、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケア――「トータルアイケア」の提供を目指す。現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌など、さまざまなメディアに取り上げられている。著書に『目は若返る』『スゴい白内障手術』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。