白内障手術にはマニュアル手術とレーザー手術があるそうですが、その違いは何でしょうか?
ご相談者様

白内障と診断され、手術について自分で調べていくうちに、マニュアル手術とレーザー手術とがあることを知りました。より安全性の高い手術を受けたいと考えていますが、双方の違いについて教えていただけますか。
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白内障手術は、眼の中でレンズの役割をしている水晶体の代わりに人工の眼内レンズを挿れるものです。角膜に切開創を作り、そこから器具を挿入して水晶体を包んでいる袋の前面を丸く切除して、劣化した水晶体を分割して吸引し、眼内レンズを挿れます。この一連の工程をメスや器具などを用いて、医師の手で行うのがマニュアル手術、レーザー装置で自動的に行うのがレーザー手術です。
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なるほど、そうなんですね…。
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白内障手術は大きく4つに分けると、
①眼内レンズを挿れる切開創を作成する角膜切開
②水晶体を包んでいる袋の囊(のう)の前面を丸く切除する前囊切開
③水晶体核を小さく砕きながら吸引する水晶体核吸引
④眼内レンズを折りたたんで挿れる眼内レンズ挿入
という工程になります。マニュアル手術もレーザー手術も、工程自体に差はないのですが、それを達成するための手段に大きな違いがあります。 -
先生がおっしゃっていた工程を達成するための手段というか、やり方が違うわけですね。
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そうです。術者の目測などの感覚、手技によって行うマニュアル手術、解析した画像をもとに装置が正確かつ自動的に行うレーザー手術では、違いが生じます。
たとえば角膜切開では切開の位置や大きさ、深さ、形が安定的に形成できるかどうか。前嚢切開では完全な円形に切れるかどうか。これは眼内レンズを囊の中心に固定しやすいかどうかに関わってきます。水晶体核分割では、マニュアルでは4分割にして破砕吸引しますが、レーザーでは2,000分割まで細かく砕くことができるため、その際、使用する超音波のエネルギーや時間により、組織へのダメージが軽減できる、という具合です。 -
つまり、レーザー手術の方が安全で、より正確であるということですか?
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そうですね。眼への負担が少なくなるので、合併症などのリスクが低くなるといえるでしょう。また傷口の治りが早いので、元の生活にいち早く復帰できるということもあります。
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手術を受ける施設がマニュアル手術とレーザー手術のどっちを行っているか、事前に聞くのは構わないのでしょうか?
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どちらを選ぶか患者さんによっては重要な選択肢となります。ですから遠慮なくお聞きになるべきだと思います。
まとめ
白内障手術では、角膜に切開創を作り、そこから器具を挿入して水晶体を包んでいる袋の前面を丸く切除し、劣化した水晶体を分割して吸引し眼内レンズを挿れます。この一連の工程をメスや器具等を用いて、医師の手で行うのがマニュアル手術、レーザー装置で自動的に行うのがレーザー手術です。それぞれの術法は、角膜切開の位置の大きさや深さ・形が安定的に形成できるか、前嚢切開で完全な円形に切れるか等に関わってきます。水晶体核分割では、マニュアル手術の場合は4分割にして破砕吸引しますが、レーザーでは2,000分割まで細かく砕くことができます。よって、使用する超音波のエネルギーや時間により、組織へのダメージを軽減できるという利点があります。なので、レーザー手術のほうが目への負担が少なくなるので合併症などのリスクが低くなります。また、傷口の治りが早いので、元の生活にいち早く復帰できるというメリットもあります。どちらの術法を選ぶかは患者さんにとって重要な選択になりますので、事前に医師に遠慮なく聞くようにしましょう。


監修:佐藤 香
アイケアクリニック院長、アイケアクリニック銀座院院長。集中力を要する緻密な作業を得意とし、とくに最先端の白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。そのほか、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケア――「トータルアイケア」の提供を目指す。現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌など、さまざまなメディアに取り上げられている。著書に『目は若返る』『スゴい白内障手術』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。