高齢でも、白内障手術は受けられますか?
ご相談者様

87歳になる父が白内障の診断を受けました。以前あんなに好きだった花壇の世話をしなくなり、家族とテレビを観て笑うこともなくなったので、念のため眼科を受診させたところ、進行した白内障が見つかったんです。手術をすすめられたのですが、なにせ高齢ですから、身体の負担のことを考えれば手術しなくてもよいかな…と迷っています。
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ご年齢的にも、ぜひ白内障手術を検討していただきたいと思います。ご家族の顔もよく判別できないくらいに白内障が進行しているなら、会話もおっくうになりがちです。お花の世話をしようにも、手元がおぼつかずケガをする恐れもありますし、よく見えない状態では、お花を愛でる気持ちも削がれてしまうのではないでしょうか。花壇から遠ざかってしまうのも無理のない話です。せっかくの楽しみを取り戻すためにも、治療して差し上げるのが良いでしょう。白内障手術をすることで、以前のようにご家族との会話やお花の世話をできるようになる可能性は高いと言えます。
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でも、実は本人が手術をいやがっている節もあって…。
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もしかすると、手術というと、身体に大きな負担がかかるという思い込みがお父様にあるからではないでしょうか。どの部位の手術であれ、お父様の年齢であれば、手術は入院をして行い、回復するまでじっとベッドに横たわり、退院するまで最低でも数週間はかかる、というようなイメージをお持ちではないですか。
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父は30代の頃、胃の手術で入院しているので、確かにそのきらいはあるかもしれません。
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ためしに、白内障手術のほとんどが日帰り手術として行われていることや、手術時間は10分ほどで傷口も2ミリ台と極めて小さいこと、痛みはまったくないことや、手術後は数時間休んでその日のうちに帰宅できること、手術後は早ければ翌日から眼帯が外れて、軽作業ができることなどを伝えてみてください。きっと白内障手術への印象が変わるかと思います。なかにはご家族のアドバイスだけでは信じがたい方もいらっしゃいますが、その場合は私たち眼科医のもとに連れてきていただいて、直接ご説明するというのも効果的でしょう。
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そうですね、伝えてみます! 本人が前向きではないことに引きずられて、私たち家族もつい否定的に考えていました。でも、白内障が父の楽しみを削いでいる可能性があるなら、そうも言っていられません。
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深刻な持病がない限り、白内障手術に年齢制限はありません。当院でも80代、90代、まれに100歳を過ぎた患者さんが実際にいらっしゃいます。仮に認知症があっても、一概に手術をお断りをするようなことはしていません。実際に患者さんとお会いして、「手術中に身体を大きく動かしてしまうといったトラブルは起きなさそうだ。安全に治療できる」と判断して、手術を行った例がたくさんありますよ。お父様にもぜひ前向きになっていただけるよう、働きかけてみてくださいね。


監修:佐藤 香
アイケアクリニック院長、アイケアクリニック銀座院院長。集中力を要する緻密な作業を得意とし、とくに最先端の白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。そのほか、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケア――「トータルアイケア」の提供を目指す。現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌など、さまざまなメディアに取り上げられている。著書に『目は若返る』『スゴい白内障手術』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。