白内障お悩みQ&A

極度の近視・乱視なのですが、眼内レンズではどれくらい補正できますか?

ご相談者様

先日、白内障手術を受けることになり、多焦点眼内レンズを希望したのですが、強度の近視と乱視があるために「できない」といわれてしまいました。その後、なんとか引き受けてくれるクリニックを見つけたのですが、「できない」といわれたことが気がかりでなりません。手術後、日常生活に支障がないくらい見えるようになるのでしょうか。

  • 一度断られてしまったのですね。それでは、その後もご不安を感じてしまうのも無理のないお話です。しかし、結論から申し上げますと、大丈夫です。白内障のみならず、近視も乱視も治りますから、現状よりずっと快適に見えるようになりますよ。今はメガネで矯正していらっしゃいますが、手術がうまく行けばそれを外して、楽に日常生活が送れるようになるはずです。ただし、それにはいくつか条件があります。

  • 本当ですか、うれしい! その条件とは何でしょうか?

  • 順番にご説明しましょう。実は近年まで、強度の近視や乱視をお持ちの場合、白内障手術を断られるケースは珍しくありませんでした。これは、最適な多焦点眼内レンズがなかったためです。度数が異なればピントも合いません。そのため、せっかく多焦点眼内レンズを入れたものの、結局メガネを手放すことができなかったというトラブルも起きていました。
    しかし今では、既製の眼内レンズのラインナップはかなり豊富になり、個々の患者さんのコンデションに合ったレンズを見つけやすくなりました。乱視に対応している眼内レンズも開発されたため、近視と乱視を併せ持っている方でも、手術が容易になってきたのです。
    しかしながら、過去に一度手術を断わられて以降、そのまま諦めてしまっている方が相当数いらっしゃいます。今では強度の乱視があっても問題なく手術できますし、レンズ選びに合わせて、レーザーを使って乱視の原因となっている角膜の歪みを削って矯正する方法もあります。このレーザーは「1000兆分の1秒」単位で照射できるので、正確かつ安全に角膜の歪みを取ることができます。それなりの設備のある施設でしか受けられない治療ではありますが、このように改善方法はいくつもあるのです。医師として、手術を諦めてしまった方々にはどうか知ってもらえればと願ってやみません。

  • 今では強度の近視や乱視があっても問題なく手術できるのですね。丁寧なご説明をありがとうございます。しかし、いまだに手術を断られている患者さんも少なくないのですね。私もそのうちの一人だったわけですが、なぜ今でも断るクリニックと引き受けるクリニックがあるのですか?

  • おそらく単純な問題で、強度の近視や乱視に対応できる多焦点眼内レンズを取り揃えていなかったためと考えられます。多焦点眼内レンズのラインナップは豊富になったものの、ほとんどの医療施設では1~3種類しか取り扱っていないというのが実情です。その程度では、強度の近視や乱視に対応できるタイプがなくても不思議ではありません。
    当院では、それぞれの患者さんが最適な選択をできるように20種類以上そろえていて、メーカーの方には「国内でそれだけそろえているところは他にありません」とよくいわれますが、そもそも10種類以上の多焦点眼内レンズを揃えている医療施設はかなり少ないとのことです。

  • 患者それぞれの目にぴったりの多焦点眼内レンズを選ぶには、2~3種類ではまったく足りないのですね。眼内レンズは厳密かつ繊細な判断のもと選ぶべきであり、20種類以上ないと最適な選択は難しい、ということでしょうか。

  • はい、私はそのように考えています。ただし、単に種類が多ければよいというわけではありません。20種類以上の多焦点レンズのそれぞれの特性と機能を知り尽くして、使い分けられなければ意味がないのです。眼内レンズの取り揃えに加えて、その知識と腕を兼ね備えた医師がクリニックに存在していなければならないので、これは想像以上に高いハードルです。実際、そのような医療施設は国内でも有数でしょう。

  • そうなのですね。ところで、20種類以上のレンズがそろっていても、患者さんに合わないことってあるのですか? ぴったりの眼内レンズが見つからない場合はどうすればよいのでしょうか。

  • そうですね、たとえば目の状態が特殊なコンデションにある患者さんや、眼内レンズはほぼぴったりで患者さん自身も満足しているけど、職業や趣味の兼ね合いにより、よりよく見えればいっそう満足度が高くなると予想される方などがいらっしゃいます。その際、既成の眼内レンズではニーズと合致しない場合は、多焦点眼内レンズをオーダーメイドで作ることをおすすめしています。

  • オーダーメイドも可能なのですね! なんだか服や靴のようです。既製の眼内レンズとオーダーメイド眼内レンズとでは、どのような違いがあるのでしょうか?

  • 「服や靴に似ている」というご感想は、実に的を得ていますね。既製品とオーダーメイドの違いは、眼内レンズの度数を示す「ディオプター」の刻みが大きいか小さいかという点です。靴のサイズでイメージするとわかりやすいでしょう。既製品の靴は24.0cm、24.5cmというように0.5cm刻みで作られますよね。既成の眼内レンズにおいても同じように、0.5ディオプター刻みで作られています。しかし、オーダーメイドの場合は0.01ディオプター刻みで作ることが可能なのです。50倍の精度ということになりますから、靴でたとえると、フィット感がとてもよくなるということですね。

  • なるほど、想像以上にすごいものなのですね。強度の近視や乱視があっても手術は可能だということ、どんな目で合っても必ずぴったりと合う眼内レンズがあるということがわかり、安心です。施設選びが大切ということもよくわかりました。多焦点眼内レンズの種類を豊富にそろえていること、そのレンズの特性・機能を引き出せる腕のいい医師がいること、また、乱視の場合は眼内レンズだけでなくレーザー治療の設備もあること…そういった前提条件をチェックして、改めて施設選びをしたいと思います。ありがとうございました。

まとめ

現在、既成の眼内レンズのラインナップはかなり豊富であり、多焦点眼内レンズであれば0.01ディオプター刻みでオーダーメイドの補正を行うことができます。「ディオプター」とは眼内レンズの度数のことです。例えば、乱視の原因になっている角膜の歪みを削って矯正する際、「1000兆分の1秒」単位でレーザー照射が可能。このように患者に合わせた手術体制が整っていれば、極度の近視・乱視であっても治療はできます。

なお当院では、それぞれの患者に合わせた最適な治療ができるよう20種類以上の眼内レンズを揃えています。メーカーの方には「国内でこれだけの数を用意しているクリニックは他にはない」と言われています。

ただ、眼内レンズの種類は単に多ければよいというわけではありません。20種類以上の多少点レンズのそれぞれの特性と機能を知り尽くしていて、正しく使いわけられなければ意味がありません。それらの知識と腕を兼ね備えた医師がクリニックに存在しているかを重視して、クリニック選びを行うべきと言えます。

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佐藤 香

監修:佐藤 香
アイケアクリニック院長、アイケアクリニック銀座院院長。集中力を要する緻密な作業を得意とし、とくに最先端の白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。そのほか、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケア――「トータルアイケア」の提供を目指す。現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌など、さまざまなメディアに取り上げられている。著書に『目は若返る』『スゴい白内障手術』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。

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