眼内レンズに寿命はあるのでしょうか?
ご相談者様

私は40代で、白内障と診断されました。まだバリバリ働きたいということもあって、多焦点眼内レンズでの手術を考えています。ただ不安があって、それは眼内レンズの寿命のことです。高齢になってから手術をされる方は気にしなくてもいいと思うのですが、私の年齢で手術をしてしまうと、死ぬまでにレンズが劣化してしまうのではないでしょうか?
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40代ですと、かなり早く白内障の症状が出てしまったのですね。加齢性の白内障は70代でほぼ100%の方が発症する病気ですが、早い方は30、40代で症状が出始めます。手術をするタイミングは患者さまによって異なりますが、当院では自覚症状が出て生活に不便を感じるようでしたら手術をおすすめしておりますので、すぐ手術に踏み切ったのは賢い選択だと思います。
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ありがとうございます。
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若いうちに手術をすることで、眼内レンズに寿命がきてしまうのではないかと心配されているのですね。それは、心配する必要はありません。
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そうなんですか?
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はい。眼内レンズに全く寿命がないわけではなく、いつかは劣化するのでしょうが、それは人間の寿命より長いと考えられています。まだ眼内レンズが登場して50年ほどであるため完全に証明されているわけではないのですが、先天白内障が発症した小さなお子さまにも適用されますので、劣化の心配はありません。
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そんな小さな子どもでも白内障になることがあるのですか?
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白内障は加齢によって発症するものがほとんどですが、なかには若くしてかかってしまう種類のものもあります。生まれつき白内障になっている先天白内障や、生後しばらくしてから発症して進行していく発達白内障のほか、アトピー性白内障や糖尿病性白内障は20~30代で発症する方は珍しくありません。
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そんなに若い方でも白内障手術をして問題ないのであれば、40代で悩む必要はなさそうですね。
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40代で白内障手術をするのは、病気の治療以上にメリットがあります。例えば、老視(老眼)も40代から始まる方がいて、本が読みづらくなったり、スマートフォンの小さい文字が読みにくくなるといったつらい症状が出ますが、白内障手術で老視も同時に治すことができるので、40代で手術をしてしまえばそもそも老視に苦しむことがなくなります。
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白内障手術で老視が治るのですか?初めて聞きました。
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老視は白内障と同じく、水晶体の変性が原因となる症状ですので、水晶体の中身を眼内レンズと入れ替える白内障手術で治すことができるのです。また、同じく水晶体の変性によって起こりやすくなる緑内障の一部も予防することができます。ただし、単焦点眼内レンズではメガネの装用が必要になるため、老視のわずらわしさを改善できたとはいえず、多焦点眼内レンズでの手術をおすすめします。
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思っていたよりもたくさんのメリットがあるのですね。
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それに、若いうちに手術をしておくことで得られる最大のメリットは、多焦点眼内レンズで実現できるクリアな視界を、長い期間享受できるということです。加齢性白内障はゆっくり進行するため、どんどん見えづらくなっていく視界を我慢してしまう方も多くいます。いつか手術をしなければいけない病気ですので、それは早ければ早いほうが良いと言えるでしょう。
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なるほど、眼内レンズの寿命を心配する必要はなく、むしろ早く手術をしたほうが、その分得られるメリットが大きくなるということですね。お話をうかがって、早速、多焦点眼内レンズでの手術を具体的に検討したいと思います。本日はありがとうございました。
まとめ
加齢性の白内障は70代でほぼ100%の人が発症する病気です。ただなかには、30〜40代で症状が出始める人もいます。手術するタイミングは患者によって異なりますが、自覚症状が出て生活に不便を感じるようならなるべく早いほうがいいです。なお、仮に若いうちに手術を行なったとしても生涯で眼内レンズに寿命がくることはありません。
これは眼内レンズの寿命が、人間の寿命より長いと考えられているためです。眼内レンズ登場からまだ50年ほどなので完全に証明されているわけではないですが、今は先天白内障を発症した小さなお子さんにも適用されるので劣化の心配はいりません。
白内障とは別に例えば老視(老眼)も40代から発症する人はいますが、老視も白内障と同じく水晶体の変性が原因となる症状なので、水晶体の中身を眼内レンズに入れ替える白内障手術で治すことができます。また、同じく水晶体の変性によって起こりやすくなる緑内障の一部も予防することが可能。若いうちにこれらの手術をして得られる最大のメリットは、多焦点眼内レンズで実現できるクリアな視界を、その後の人生という長い期間享受できることです。そのため、眼内レンズの手術では、手術後もメガネの装用が必要な単焦点眼内レンズではなく、近方と遠方のどちらにもピントがあう多焦点眼内レンズをおすすめしています。


監修:佐藤 香
アイケアクリニック院長、アイケアクリニック銀座院院長。集中力を要する緻密な作業を得意とし、とくに最先端の白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。そのほか、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケア――「トータルアイケア」の提供を目指す。現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌など、さまざまなメディアに取り上げられている。著書に『目は若返る』『スゴい白内障手術』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。